自然と街のあいだで描く、メルボルンという場所

私は年に二回、メルボルンを訪れています。
観光が目的というより、路上で絵を描き、街と自然の中で過ごすための滞在です。

メルボルンでは、許可を取ることで市内のさまざまな場所でバスキングができます。
絵を描き、必要な分だけ販売し、また描く時間をつくる。
この循環が、私にとって無理のない形でした。


なぜメルボルンなのか

メルボルンは、都市でありながら自然との距離がとても近い街です。
少し移動すれば海や公園、山があり、街の中にも大きな木々や緑が残っています。

人の流れは穏やかで、急かされる感覚が少ない。
路上で絵を描いていても、必要以上に干渉されることはなく、
それぞれの生活が、ただ横を通り過ぎていきます。

同じオーストラリアの街から来た人や、
中国、インド、ベネズエラ、アメリカ──
日常生活では出会わない背景を持つ人たちと、
偶然言葉を交わすこともあります。

ランダムな出会いが、ここでは自然に起こります。


五感で感じるメルボルン

青い空と澄んだ海。
トラムが近づくときの、ベルの澄んだ音。
ユーカリの木の匂い。
夏でも少し冷たさを含んだ風が、肌に触れる感覚。

メルボルンでは、五感が常にひらいている感じがします。
見て、聞いて、匂いを感じて、風を受け取る。
特別なことをしなくても、自然に「今」にいられる場所です。


表現は、無理に生み出さなくていい

ここで絵を描いていると、
「表現しよう」と思う前に、自然と手が動きます。

人々の生活感と、自然の存在を交互に体感しながら、
自分を通して外に出ていくものを、
そのままキャンバスに置いていく。

どう見られるか、何になるかよりも、
ただ、そこにあること自体に意味がある。

メルボルンは、そういう感覚を思い出させてくれる場所です。


自然と旅が好きな人へ

もし、
自然の中に身を置くことが好きで、
旅先で「何かをしなければ」と思わずに過ごしたい人なら。

メルボルンは、
ただ歩き、ただ感じ、ただ存在することを、
静かに許してくれる街かもしれません。

表現は、あとからついてくる。

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